医療を考える会

お知らせ

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「医師と弁護士のクロストーク~昨今の安楽死問題を中心に~」を開催しました。

「医師と弁護士のクロストーク~昨今の安楽死問題を中心に~」を開催しました。

安楽死にまつわる刑罰

1 殺人罪
2 嘱託殺人罪
1は人を殺した罪
2は人の嘱託(依頼)を受けて殺害する罪です。

医師が患者や家族の依頼に応じて患者を殺害した場合

法律上どのように解釈されるでしょうか?

安楽死のリーディングケース(先例判決)として
有名な東海大学安楽死事件によると

①患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
②患者は死が避けられず、その死期が迫っていること
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと
④生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

上記要件を満たす場合、安楽死が許容されうるとしました。

ALS嘱託殺人事件の法律上の解釈

では昨今話題のALS嘱託殺人事件についてはどうでしょうか?

被告人は「患者の自己決定による依頼は憲法上保護すべきであり、処罰すべきでないとして、無罪を主張」しました。

対する裁判所は「死期が間近に迫り耐えがたい肉体的苦痛に苦しむ患者があり、嘱託殺人罪に問うことが相当ではない事案があり得るとしながらも、自己決定権は、個人が生存していることが前提であり、自らの命を絶つために他者の援助を求める権利は憲法上は導かれない」としました。

すなわち「日本国においては、自殺する権利はない」という意味です。

消極的安楽死と法律

いっぽう、加害行為のない治療の中止(消極的安楽死)については法律で問題になることはなく、現場の判断で許容されていると思われます。

治療を拒む患者さんへの対応も含め、医療チーム、患者家族の生命観、倫理観が問われる領域と考えます。

参加者の感想

●国家試験の勉強をするにあたって医療行為は法律に縛られているということを実感するようになってきたので、東海大学事件とALS嘱託殺人事件について法律的解釈を説明いただき、大変勉強になりました。一つ疑問に思ったのは法学の目的はなにかということです。会の中でも、医療的倫理観と法律が対立する場面が多くあるという話がありました。法学的観点から言えば、家族の要請にしたがって消極的安楽死とも呼べる対応をするべき(あるいは、せざるを得ない)だという結論でしたが、やはり患者自身の幸福を考えるべき医療者としては倫理的な疑問が残ります。(医学生)

●このような貴重な会を、無料で自宅にいながら、聴けることは大変ありがたく思っています。学会や他研修以外で、医療や福祉従事者の方のご意見をきけるのも大変貴重だと感じています。準備など含め大変だと思いますが、継続を期待しています。(看護師)

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